理事長挨拶

近藤真庸

 日本教育保健学会理事長


 近藤 真庸
(岐阜大学教授)

ご挨拶

1993年の第40回日本学校保健学会の際に,「教育保健の概念をめぐって」と題する自由集会シンポジウムを開き,教育の視点から深く子どもの健康課題を把握し,学校保健の諸活動を捉え返すべく討議を行いました。そして終了後,参加者全員の総意で,継続的に活動展開する研究会(「日本教育保健研究会」)の立ち上げを決定しました。

 その翌年(1994年),第1回の日本教育保健研究大会を開催し,その後,10年間活動を継続したのち,そこでの実績を踏まえ,2004年には,「日本教育保健研究会」を発展的に解消し,「日本教育保健学会」を発足させたのでした。

それから13年が経過しました。その間,本学会では,毎年「研究年報」を刊行し,総説や原著論文のほか,年次学会における討議の概要について報告するだけでなく,ニュースレター(年3回)を通した会員同士の研究交流を図ったり,近年では研究フォーラムを開催し,教育保健研究の成果の普及にも努めています。また,昨年6月には,これまでの研究活動のまとめとして,2年間の集団的な研究討議を踏まえて『教師のための教育保健学』(東山書房)を公刊しました。

本学会では,実証的・実験的実践を研究活動の柱にすえ,①子どもの教育現実のなかに保健現実をとらえ,②保健現実が提起する問題を研究の対象として位置づけ,③問題解決のための実験的実践や保健現実の実証的解明に挑み,④そこで得られた知見の教育学的考察を通して,教育保健学の理論構築をめざしています。

こうした「研究の臨床性」は,教育保健研究の方法論上の大きな特徴といえます。本学会が,養護教諭をはじめとする現場教員などの実践者と大学等の研究機関に所属する研究者との対等・平等な関係での共同討議を大切にしているのは,そうした理由からです。

もちろん,原理的・歴史的研究も,研究活動の重要な柱です。たとえば,戦前の「教育としての学校衛生」論が,戦争遂行のための国策に組み込まれ,子どもたちのいのち守れなかったという事実の原理的・歴史的解明は,本学会に課された使命であり,学校保健・健康教育に関する歴史研究で教育学の学位を取得した中堅メンバーによる研究の進展が期待されます。

2017年4月より,森 昭三(当時・筑波大学教授)会長,和唐正勝(当時・宇都宮大学教授)理事長,数見隆生(当時・宮城教育大学教授)理事長からバトンを引き継ぎ,私が新理事長に就任することになり,学会をリードする理事メンバーの世代交代も進みつつあります。

教育保健研究のさらなる深化と広がりのためには,医学・保健分野のみならず,子どもの教育現実=保健現実に関心をもつ多様な分野の研究者,学校・保育所・病院などの現場で日々子どもの成長を願って実践されている方や子どもの親たち,あるいは,かつて〈子ども〉であったことのある大人の方々の参加が不可欠です。

みなさんの,本学会への加入を心から歓迎します。